サハラ砂漠以南のアフリカでは、近代以降にヨーロッパからの宣教によりキリスト教化した地域が多いのですが、エリトリアでのキリスト教は、遙かに古い歴史をもっています。このテワヘド※と呼ばれるエリトリアのキリスト教の起源は、4世紀にシリアの商人がアクスム王国を訪れた時までさかのぼると言われています。このキリスト教伝来以来、この地では独自のキリスト教が発展を遂げてきました。
ティムカット(主顕節)はこのテワヘドで、イエス・キリストが洗礼を受けたことを記念して祝われるお祭りで、毎年1月19日に開かれます。エリトリアの各教会には、十戒が納められた聖なる箱として“タボット”と呼ばれる聖櫃が代々伝えられており、ふだんは聖堂の奥深くに鎮座し、限られた聖職者以外近づくことが許されません。しかし、一年に一度、このティムカットの日だけ、タボットは教会の外に持ち出すことが許されます。そのため、ティムカットはタボットのお祭りともいえ、ティムカットの前日18日に教会から持ち出され、聖職者に率いられた数百、数千の信徒たちが聖画や聖具をかかげてタボットを中心に街を練り歩きます。金糸に縁取られたエンジや黄色、水色などのカラフルな衣装をまとった聖職者たちと、伝統的な白い綿の衣装に身を包んだ信徒たちが、太鼓や笛の音とともに行進する様は息を呑むような美しさで、毎年海外からも報道陣や観光客が訪れます。
洗礼を記念するお祭りであるティムカットは、泉や川など水辺で行われます。アスマラでは、ハルネット通りの端に位置する“マイ・ティムカット”と呼ばれる泉のある広場で行われます。